全身的な病気に密な関係を持つ歯周病

 

こんにちは
歯周病は、むし歯と並ぶ歯の病気として広く知られている病気です。
多くの方は、歯周病と聞くと、歯やその周囲組織だけに生じる病気と思われているようです。
ところが、実は歯周病は、単に歯やその周囲だけに起こる病気ではなく、その影響は全身のさまざまな病気に及ぶことが明らかになっています。
歯周病はどのように全身の健康に影響を及ぼすのでしょうか。
今回は、歯周病と全身疾患との関係についてご説明します。

<h2>血管系の病気</h2>
歯周病菌は血管を通して運ばれることから、血管系の病気と歯周病は密接に関係しています。
<h3>心臓病</h3>
狭心症や心筋梗塞という病気は、心臓の血管に血栓という詰まりができることで起こります。
細菌性心内膜炎という心臓病の方の心臓の病巣から歯周病菌が見つかっていることから、歯周病菌が血管に入り込み、心臓まで届けられていることがわかっています。
心臓の血管内の歯周病菌に対して、免疫系が作用して炎症反応が起こると、血管にも炎症反応が生じます。
この結果、血栓が作られると考えられています。
また、動脈硬化を悪化させているとも指摘されています。
歯周病は、血栓の形成や動脈硬化の進行により心臓病のリスクを高めます。
<h3>脳梗塞</h3>
歯周病菌は、脳の血管にも届いています。
脳の血管内で炎症反応が起こることで血栓が作られる、もしくは心臓で作られた血栓が脳に送られることで、脳血管が詰まると、脳梗塞を起こす場合があります。
歯周病になっていると、そうでない方と比べて脳梗塞を起こすリスクが高いこともわかっています。

<h2>糖尿病</h2>
糖尿病は、インスリンの量や働きの不足によって血糖値が上がる病気です。
糖尿病にはさまざまな合併症があります。
以前からよく知られている合併症は、網膜症による失明や腎障害による透析、足病変による足の壊疽です。
実は、歯周病は第四の合併症とも言われており、糖尿病が進行すると歯周病になりやすくなります。
困ったことに、歯周病が悪化するとインスリンの抵抗性が高まり糖尿病も悪化します。
歯周病は、糖尿病と無限ループのような密な関係にあります。
<h2>妊娠への影響</h2>
歯周病は、妊娠中の方にも悪影響を及ぼします。
<h3>妊娠性歯周炎</h3>
妊娠中、ホルモンバランスの変化により、歯肉の腫れや出血が起こりやすくなります。
これを妊娠性歯周炎とよんでいます。
妊娠性歯周炎は、妊娠前から歯周病になっている方はより悪化しやすくなりますし、妊娠前に歯周病になっていなかった方も妊娠を契機に発症することがあります。
<h3>早産と低体重児出産</h3>
赤ちゃんのいる胎盤にも歯周病菌は血管を通して運ばれます。
歯周病菌が胎盤を過度に刺激する結果、胎児の成長発育に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に影響度が高いのが、中等度以上の歯周病です。
中等度以上の歯周病の妊婦さんは、そうでない方と比べると早産や低体重児出産のリスクが高いことが指摘されています。
<h2>肺炎</h2>
歯周病菌は肺炎の原因にもなっていると考えられています。
<h3>誤嚥性肺炎</h3>
お口の中には、歯周病菌だけでなく、さまざまな細菌がいます。
食べたり飲んだりすると、食べ物や飲み物の中に細菌が入り込みます。
もちろん、唾液にも入り込んでいます。
食べ物や飲み物、唾液がちゃんと胃に入れば、胃酸で殺菌されるので問題ありません。
ところが、高齢の方などに多いのですが、ちゃんと飲み込めずに、肺に入り込んでしまうことがあります。
そうすると、肺の中で歯周病菌などの細菌が増殖して、誤嚥性肺炎という肺炎を起こす場合があります。
<h2>認知症</h2>
認知症は、社会の高齢化の進展に伴い社会問題となっています。
認知症にも歯周病は関係しています。
<h3>アルツハイマー型認知症</h3>
認知症はいくつかのタイプに分類されており、アルツハイマー型認知症はそのひとつです。
アルツハイマー型認知症の発症には、アミロイドβというタンパク質が関係していることが明らかになっています。
アルツハイマー型認知症の進行のきっかけとして脳の中に集まったアミロイドβが関係していると考えられています。
アミロイドβは、種々の原因で作られますが、歯周病菌により炎症反応が生じたときにもアミロイドβが作られます。
歯周病菌は体の各所に血液の流れによって運ばれるため、身体中でアミロイドβが作られ、脳に集まり、アルツハイマー型認知症をより進行させる可能性が指摘されています。
<h2>リウマチ</h2>
リウマチは、自分自身の免疫系が手足の関節に反応し、関節の痛みや変形を生じる病気です。
リウマチの発症には、抗シトルリン化タンパク抗体という免疫細胞が関係しているとされています。
歯周病菌の中には、この細胞を作り出す際に必要な酵素を持つものがあり、リウマチを悪化させる要因として考えられています。
<h2>まとめ</h2>
今回は、歯周病と全身疾患との関係性についてお話ししました。
歯周病は単に歯や歯周組織に生じるだけの病気ではなく、全身的な病気と密接な関係にある病気と考えられるようになっています。
したがって、歯周病の予防や治療は、全身的な健康管理という視点からもとても大切です。
当院では、歯周病の専門知識に加え、長年にわたる歯周病治療を通した豊富な経験を有する歯科医院です。
当院で一緒に歯周病のコントロールを行い、全身的な健康維持に努めませんか。